やまとの非日常ブログ

非日常な話としてライブ参戦、音楽や映画、ゲームなどの話を記します

新型コロナのニュースで思い出す 藤子F不二雄の名作短編マンガの話

 

世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス

パンデミックが宣言され 国境が事実上 封鎖されたり

入国禁止や外出禁止 イベントの中止 外食禁止

マスク トイレットペーパー買い占め

日本でもついに緊急事態宣言が出されるなど

世界中でパニックに陥ってます。

 

個人的に新型コロナウイルスの話題に触れると

藤子 F 不二雄の異色短編の

『間引き』『定年退食』を思い出してしまいます。

 

藤子 F 不二雄は説明不要ですよね。

ドラえもん』『オバケのQ太郎』『パーマン

キテレツ大百科』etc…

挙げたらキリがないほどの代表作がある

天才漫画家です。

 

異色短編も 説明不要な知名度だと思います。

前述の子供向けの作品を執筆するかたわら、

青年誌などの大人向けの媒体に発表した作品群で、

SFあり、コメディあり、シュールあり、

社会風刺や人類への警鐘などメッセージ性の強い

まさに異色短編です。

 

なぜ コロナウイルスのニュースで

『間引き』『定年退食』を思い出すかと言うと、

両作品のキーワードである『人口爆発』から

連想してしまうからです。

 


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『間引き』が書かれた1970年代は ある事件が相次ぎ

社会問題となっていました。

それは【コインロッカーベイビー】

親がコインロッカーに赤ん坊を捨てるという

信じがたい事件が続発していたというのです。

匿名性が高く、発見までに時間がかかる事が多く、

異臭がして中を改めるということが多かったようなので

発見時には亡くなっている場合が多かったそうです。

 

主人公はコインロッカーの管理人。

(コインロッカーに管理人がいたとは驚きですが)

この日も鼻を効かせ、異臭を放つロッカーがないか

確認しながら出勤してきます。

 

しばらくすると不審な行動をする男が現れ、

主人公は声をかけます。

 

男は新聞記者であり、コインロッカーに

赤ん坊が捨てられる決定的瞬間を

撮影しに来たと言います。

 

新聞記者は管理人である主人公に話を聴きたいと言い、

2人は管理人室に戻ります。

初めは形式通りの取材でしたが、ある事件が起こり、

新聞記者は一連のコインロッカーベイビー事件に

自身が立てた仮説を説きはじめます。

 

どの科の動物にも特有の全個体数には

上限があるという説を持ち出し、

有史以来、絶滅せず現代まで生き残っている生物の

年間の平均増殖率は0に近いものばかりである

と語ります。

 

人類も生誕以来、

人口増殖率はずっと0.001%であった。

戦争、飢饉、疫病が

人類の増殖率を調整していたというのです。

 

したたかな人類は

生命尊重の思想、農業の改良、新薬の発見などで

安全弁を払いのけてしまったと続けます。

 

記者の仮説はさらに展開していくのですが、

この記事では語りませんので

『間引き』の結末は ぜひコミックを読んで

その目で確かめてください。

 

 

 

 

なぜ新型コロナに結び付くかというと

『間引き』の新聞記者の仮説。

「疫病とは人間の増殖率を調整する安全弁である」

という台詞が頭にこびりついているからです。

 

今回の新型コロナウイルス

2000年代初頭に猛威をふるったSARS

どちらも世界最大の人口を抱える中国から始まった事を

考えると人類という種が絶滅という道を辿らないよう

調整機能が働いているという考えが頭をよぎってしまいます。

 


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そして『定年退食』

高齢者の人口比率が増大した近未来の社会の話ですが、

発表されたのは1973年です。

まさに現代がその近未来の世界ではないでしょうか。

 

この時代では汚染によって

農業・漁業の収穫量が減少し、

食糧難が深刻化していた。

 

日本では配給制度が復活していますが、

それでも深刻化する食料不足、医療供給、

年金給付の問題にあえいでいる状態です。

 

苦肉の策として【定員法】が制定されています。

【定員法】とは定年退職後、年金給付がはじまる

現代でいう定年を【一次定年】とし、

その後、75歳で【二次定年】を制定しているのです。

 

【二次定年】を迎えた者は年金給付を停止され、

社会保障も一切受けられなくなるという

恐ろしく残酷な制度です。

 

主人公は74歳であり、まもなく二次定年を迎える

年齢であった。

 

【二次定年特別延長】という

救済処置に申請していますが

その倍率は天文学的な確率となっています。

 

友人の吹山のどこで聞いたか分からない情報、

申込書に爪で線を引くと選ばれるという話を

こっそり実行するほどです。

 

緊急生中継で首相がテレビ画面に映し出されます。

辺りが騒然とする中で

首相が声明を発表します。

その内容が【定員法】の大幅な縮小でした。

 

以下が時の総理大臣の声明です。

 

「一次定年を56歳とします。

   それ以上の生産人口をわが国は必要としません。

 

    二次定年を57歳~72歳までとします。

    それ以上の扶養能力をわが国は持ちません。

 

    73歳以上のかたは本日をもって

    年金、食料、医療、その他一切の国家による保証を

    打ち切ります。」

 

絶望的な声明です。

現代の日本と原因に差異はあれど

置かれている状況は酷似しています。

 

物語の全容はぜひその目でお確かめください。

 

 

 

 

末期の高齢化社会となると

高齢者はもはや存在価値を認められず、

切り捨てられるようになっているのです。

 

現代は定年を延長して持たせようとしていますが、

より高齢化社会が進んだら【定員法】と同じような

制度が置かれることになるかもしれません。

 

なぜ新型コロナで『定年退食』を思い出すかというと

高齢者の致死率が高いと言われているためです。

 

どんな病気でも高齢者の方が重篤な症状に陥る危険が

あると思いますが、

新型コロナウイルスは報道のしかたも相まって

より高齢者狙い撃ちの印象があります。

 

先述の『間引き』と合わせて想像してみると

増えすぎた人口を削減するため

種の存続の安全弁として機能しているのが

新型コロナウイルスをはじめとした疫病であり、

 

『定年退食』のような末期の高齢化社会では

切り捨てられるだけの高齢者たちを

優先的に間引いているという…

恐ろしい想像が浮かんでしまいます。

 

『間引き』『定年退食』を初めて読んだのは

中学生、高校生くらいの頃でしたが、

それ以来、この後味の悪い

社会性のある物語が頭の片隅にあり、

今回の新型コロナなどネガティブな現実に出会った時、この作品と結び付いてしまう

思考回路ができてしまいました(笑)

 

それにしても藤子F不二雄が天才といわれるのは

この振り幅ですよね。

ドラえもんなどの子供向けの作品と平行して

こんなトラウマものの後味の悪さを残す名作を

多数 発表しているんですから。

 

今回は新型コロナのニュースで個人的に思い出す

『間引き』と『定年退食』の2作ですが、

藤子F不二雄の いい意味で後味の悪い(笑)

社会派の名作短編が多数遺されていますので

興味のある方は是非 読んでみてください。